人工弁で障害年金はもらえるの?社労士が解説!【新潟で障害年金にお悩みの方へ】
最終更新日 25-09-14
人工弁と障害年金の基礎知識
心臓弁膜症などの治療のために人工弁装着手術を受け、その後の日常生活や仕事に不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?そのような方々の経済的な基盤を支え、安心して治療や生活を送るための一助となるのが「障害年金」です。ここでは、まず人工弁の基本と障害年金制度の概要について解説します。
人工弁とは?
人工弁とは心臓弁膜症などの病気で心臓弁が機能しなくなった場合、心臓弁の代わりとして体内に植え込む人工の心臓弁のことです。主に「機械弁」と「生体弁」の2種類があります。
人工弁を装着すると激しい運動が制限されるなど、日常生活において制約が生じることがあります。
障害年金の概要と役割
「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害者のための特別な手当や、事故のケガでないと申請できないと誤解されがちですが、老齢年金と同じ公的年金制度の一つです。もちろん、人工弁を装着した場合も障害年金の対象となります。
障害の程度に応じて安定した収入が継続的に得られることは、ご本人の経済的な安心だけでなく、精神的な安定にも繋がります。術後の体調管理や、無理のない働き方への移行を支える重要な役割を果たします。
人工弁は原則として障害等級3級に認定されます
障害年金の認定において、人工弁の装着は「循環器疾患の障害」に分類されます。
他の病気やケガと大きく異なる点は、人工弁を装着した場合、原則として「障害等級3級」に認定されるという点です。
これは、人工弁を装着したことで、日常生活や労働に一定の制限が加わることを国が認めているためです。したがって、術後の経過が良好であっても、障害年金を受給できる可能性が非常に高いのが特徴です。
※ただし、障害等級3級は厚生障害年金のみです。
障害年金の受給要件
障害年金を受給するためには、定められたいくつかの要件をすべて満たす必要があります。ここでは、障害の程度を示す「障害等級」や、申請に不可欠な「初診日」など、具体的な受給要件について解説します。
障害等級の説明(1級、2級、3級)
障害年金は、障害の状態に応じて1級、2級、3級の等級に分けられます。人工弁を含む循環器疾患の障害における等級の目安は以下の通りです。
- 1級: 身のまわりのことがほとんどできない状態で常時の介助が必要な状態。
- 2級: 日常生活が著しく制限され、家庭内の軽活動しかできない状態。
- 3級(厚生年金のみ): 労働に著しい制限が必要な状態。人工弁を装着した場合は、原則この3級に該当します。
※ 障害厚生年金の加入者で、3級よりも軽い障害が残った場合に一時金として支給される「障害手当金」の制度もあります。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。申請の前に、条件を満たしているか必ず確認しましょう。
①初診日要件
国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガ(心臓弁膜症など)で、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を「初診日」といいます。初診日にどの年金制度に加入していたかによって、受給できる障害年金の種類(障害基礎年金または障害厚生年金)が決まります。
②保険料納付要件
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち、3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていることが必要です。
この要件を満たせない場合でも、令和8年3月31日までに初診日がある場合は、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい、という特例があります。
人工弁は初診日に厚生年金に加入していることが必要です。
③障害認定日の要件
障害年金を受けられるかどうかは「障害認定日」に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。
通常、障害認定日は「初診日から1年6か月が経過した日」ですが、初診日から1年6か月以内に人工弁を装着した場合は特例があり、「人工弁を装着した日(手術日)」が障害認定日となります。
初診日から1年6か月を待たずに申請手続きを進めることができます。
④受給できるのは原則20歳から64歳まで
障害年金は原則20歳から64歳までの人が請求できます。65歳になると、障害年金の請求方法が変わったり、老齢年金との選択になったりするため注意が必要です。
人工弁における認定基準のポイント
人工弁の障害年金申請では、他の傷病とは異なる、特有の認定基準のポイントがあります。
人工弁を装着すれば、原則「障害等級3級」
人工弁を装着した場合、原則として障害厚生年金3級に認定されます。
術後の経過が良く、元気に日常生活を送っていたり、仕事に復帰していたりする場合でも、障害厚生年金3級の対象となります。人工弁での申請における最大のポイントです。
2級以上に認定されるケース
術後の状態によっては、2級や1級に認定される可能性もあります。等級が上がるかどうかは、心臓の機能や日常生活の支障の程度によって総合的に判断されます。
具体的には、以下のような点が考慮されます。
- 臨床所見: 心電図、胸部X線、心エコーなどの検査結果。
- 検査成績: 心機能の指標であるEF値(左室駆出率)など。
- 日常生活の状況: 食事の準備や摂取、身の回りの清潔保持、金銭管理、対人関係、身辺の安全保持などが、どの程度自力で行えるか。
これらの状況を「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」で具体的に示すことで、2級以上への認定の可能性が出てきます。
具体的な申請手続きの流れ
障害年金の申請は、一般的に以下の流れで進めます。
- 年金事務所への相談: まずはお近くの年金事務所や年金相談センターに相談し、必要な書類や手続きの概要を確認します。
- 初診日の証明: 初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得します。
- 診断書の作成依頼: 人工弁の置換手術を行った病院や、現在通院している医療機関に、障害年金用の診断書(循環器疾患用)の作成を依頼します。
- 申立書の作成: 「病歴・就労状況等申立書」を作成します。これは、発症から現在までの病状の経過や、日常生活・就労における支障を、ご自身の言葉で伝えるための重要な書類です。
- 書類の提出: 揃えた書類を年金事務所または市区町村役場の窓口に提出します。
書類の準備には時間がかかるため、計画的に進めることが大切です。
障害年金の金額について
障害年金を受給できるとなった場合、実際にいくらくらい受け取れるのかは、最も気になるところでしょう。ここでは、人工弁で受給する場合の支給額の目安や、働きながら受給する際の注意点について解説します。
人工弁における支給の目安額
障害年金の額は、年金の種類(基礎・厚生)と障害等級によって決まります。以下は令和7年度の年額です。
- 障害基礎年金 (初診日が国民年金の方)
- 1級: 1,039,625 円 +子の加算
- 2級: 831,700 円+ 子の加算
※子の加算:18歳年度末までの子(障害等級1・2級の場合は20歳未満の子)がいる場合に加算されます。第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円です。
- 障害厚生年金 (初診日が厚生年金の方)
- 1級: 障害基礎年金1級+(報酬比例の年金額) × 1.25 + 配偶者の加給年金額
- 2級: 障害基礎年金2級+(報酬比例の年金額) + 配偶者の加給年金額
- 3級: (報酬比例の年金額) ※最低保障額 623,800円
※報酬比例の年金額は、厚生年金の加入期間や過去の報酬額(給与)によって一人ひとり異なります。
※配偶者の加給年金額:生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(年額239,300円)。
支給が「もらえない」ケースとは?
人工弁の装着は原則3級に該当しますが、以下のような場合は障害年金が受給できない(不支給・却下となる)可能性があります。
- 初診日要件を満たさない: 初診日を特定・証明できない場合。
- 保険料納付要件を満たさない: 初診日前の一定期間、年金保険料の未納が多い場合。
- 初診日が国民年金だった場合: 障害基礎年金には3級の制度がありません。そのため、術後の状態が2級以上に該当しない限り、障害年金を受給することはできません。
働きながら受給する場合の注意点
「働いていると障害年金はもらえない」と思われがちですが、全くそんなことはありません。
特に、人工弁で認定される障害厚生年金3級は、もともと「労働に著しい制限がある」状態を対象としており、働きながら受給することを前提とした等級です。
したがって、術後に仕事に復帰していても、それが理由で不支給になることはありません。障害年金を受給しながら、体力に合わせて勤務時間や業務内容を調整し、無理なく仕事を続けることが可能です。
永久認定とそのメリット
障害年金には、数年ごとに診断書の提出が必要な「有期認定」と、更新手続きが不要な「永久認定」があります。
人工弁を装着した場合、その状態は生涯変わらないため、原則として「永久認定」となります。
一度認定されれば、生涯にわたって年金が支給され、数年ごとの更新手続きの負担や、将来支給が停止されるかもしれないという不安がなくなります。これは精神的にも経済的にも大きなメリットと言えるでしょう。
障害年金の申請時のポイント
障害年金の申請は、書類審査です。提出する書類の完成度が、結果を大きく左右します。ここでは、人工弁の方が申請を成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。
有効な診断書の書き方とは
診断書は、障害等級を決定づける最も重要な書類です。人工弁の場合、「人工弁を装着した」という事実を記載してもらうことが大前提です。
その上で、2級以上を目指す場合は、日常生活や就労における具体的な支障を医師にしっかり伝えることが重要です。
- 日常生活の困難さを具体的に伝える: 「疲れやすい」だけでなく、「駅の階段を休憩なしで登れない」「長時間の座位を保つのがつらい」など、具体的なエピソードを伝えます。
- 就労状況を正確に伝える: 働いている場合は、どのような業務内容で、周囲からどのような配慮を受けているかを詳細に説明しましょう。
- メモを作成して渡す: 診察時間は限られています。事前に日常生活での支障などをまとめたメモを医師に渡すのが非常に有効です。
必要な証明書と書類一覧
障害年金の申請には、主に以下の書類が必要です。
- 医師に作成してもらう書類
- 受診状況等証明書: 初診の病院と診断書作成の病院が違う場合に必要です。
- 診断書:医師に作成してもらいます。
- 自身で用意する書類
- 年金請求書
- 病歴・就労状況等申立書
- 戸籍謄本、住民票など(配偶者・子供の確認のため)
- 請求者の振込先金融機関の通帳等のコピー
- 年金手帳、マイナンバーカードなど
これらの書類に不備があると、返戻されたり審査が遅れたりする原因になります。
申立書とその提出のタイミング
「病歴・就労状況等申立書」は、診断書では伝えきれないご自身の困難さをアピールできる唯一の書類です。
2級以上の場合は、術後の自覚症状や、日常生活でどのような不便があるか、仕事でどのような配慮を受けているかなどを、時系列で具体的に記述することが重要です。診断書の内容を補強し、ご自身の状況を審査官に正確に伝えるための大切な書類となります。
受給申請後の流れと注意点
無事に書類を提出した後も、結果が分かるまでは落ち着かない日々が続くかもしれません。ここでは、申請後の審査期間や結果通知について解説します。
申請後の審査期間とは
障害年金の申請書類を提出してから結果が通知されるまでの審査期間は、障害基礎年金は3か月程、障害厚生年金の場合は3か月半程が目安です。ただし、事案によってはこれより長くかかることもあります。
審査が終わると、日本年金機構から結果が郵送で通知されます。支給が決定した場合は「年金証書」、不支給となった場合は「不支給決定通知書」が届きます。
無料相談受付中
障害年金の申請は複雑で、特に人工弁の場合は、初診日の証明やご自身の状況に応じた適切な書類作成など、専門的な知識が求められます。社会保険労務士(社労士)は、障害年金の専門家として申請をサポートします。
以下のような状況であれば、当事務所の無料相談をご検討ください。
- 手続きが複雑で、何から手をつけていいか分からない
- 初診日の証明が難しい
- 病歴・就労状況等申立書の書き方が分からない
- 術後の状態で2級以上を目指したい
- 仕事が忙しく、申請準備の時間が取れない
オンラインや実際にお会いして障害年金に関するご相談をお受けいたします。
また、ご自身での申請が難しい場合には、障害年金の申請代行サポートもございますので、お気軽にご相談ください。

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