【社労士が解説】障害年金の永久認定|対象の傷病一覧から有期認定との違い、注意点まで

最終更新日 25-10-08

障害年金の更新手続きのたびに、症状の証明や書類の準備に大きな負担を感じ、「この先もずっと更新が続くのだろうか…」と不安に思われている方はいらっしゃいませんか?

障害年金には、更新が不要となる「永久認定」という制度があります。しかし、「自分の傷病は対象になるのか」「一度決まったら絶対変わらないのか」など、詳しい内容まではご存じない方も多いかもしれません。

 

障害年金の「永久認定」とは?

まずは、障害年金の「永久認定」がどのような制度なのか、基本的な部分から確認していきましょう。

永久認定の定義と目的

永久認定とは、その名の通り、障害の状態が将来にわたって変わらないと判断された場合に、生涯にわたり障害年金を受け取ることができる認定のことです。

この制度の目的は、症状が固定し、回復が見込めない方に対して、定期的な更新手続き(診断書の提出)の負担をなくし、安定した生活を保障することにあります。

有期認定との決定的な違い

障害年金の認定には「永久認定」のほかに「有期認定」があります。両者の決定的な違いは、更新手続き(診断書の提出)の有無です。

  • 永久認定: 更新手続きが不要。原則として生涯にわたり年金が支給される。
  • 有期認定: 1〜5年ごとに更新が必要。日本年金機構から送られてくる「障害状態確認届(診断書)」を提出し、改めて障害状態の審査を受ける必要がある。

有期認定の場合、更新時の診断書の内容によっては、等級が下がったり、支給が停止されたりする可能性があります。その点、永久認定は更新がないため、精神的な負担が大きく軽減されるのが特徴です。

 

永久認定の対象となる傷病は?判断基準を徹底解説

 

では、どのような傷病が永久認定の対象となるのでしょうか。重要なのは、「症状が固定し、これ以上回復も悪化もしない状態」と医学的に判断されるかどうかです。

ここでは、具体的な傷病の例を挙げて解説します。

【器質的障害】手足の切断、人工関節、失明など

身体の機能に直接的な変化があり、元に戻ることがない障害が対象となりやすいです。

  • 手足の欠損・切断: 手や足(指を含む)を切断したもの
  • 人工関節・人工骨頭: 股関節や膝関節などに人工関節・人工骨頭を挿入置換したもの
  • 完全失明: 両目の視力が矯正不能な状態になったもの
  • 音声機能の喪失: 声帯の全摘出などにより、発声が全くできなくなったもの

これらの障害は、現代の医療では元の状態に回復することが困難であるため、永久認定と判断されるケースが多くなります。

【内部疾患】人工透析、心臓ペースメーカーなど

身体の内部機能に永続的な補助が必要となる場合も、永久認定の対象となり得ます。

  • 人工透析療法: 腎不全のため、生涯にわたり透析が必要と判断された場合
  • 心臓ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器): 心臓の機能を補助する機器を体内に植え込んだ場合
  • 人工肛門、新膀胱: 永久的に造設された場合
  • 遷延性植物状態(いわゆる植物状態)

これらのケースも、生命維持のために治療や器具が不可欠であり、その状態が永続することから永久認定されやすいと言えます。

【精神障害】知的障害や一部の発達障害

精神障害の場合、症状の変動が見られることが多いため、永久認定は慎重に判断されます。しかし、以下のケースでは永久認定の可能性があります。

  • 知的障害: 生まれつきの障害であり、知能指数(IQ)や日常生活能力が将来的に大きく改善する可能性が低いと判断された場合
  • 一部の発達障害: 症状が固定的で、療育や治療によっても改善が見込まれず、日常生活に著しい支障が続くと判断された場合

うつ病や統合失調症で永久認定は難しい?

うつ病、統合失調症、双極性障害などの精神疾患は、症状に波があり、治療によって状態が変化する可能性があるため、原則として有期認定となります。

良くなったり悪くなったりを繰り返す特性があるため、「症状が固定した」と判断することが難しく、定期的に状態を確認する必要があるからです。そのため、これらの傷病で永久認定を得ることは極めて難しいのが現状です。

 

 

永久認定の2つの誤解|「取り消されない」「金額は変わらない」は本当?

「永久認定=一度決まったら生涯安泰」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は注意すべき点が2つあります。よくある誤解を解き、正しい知識を身につけましょう。

誤解1:永久認定でも支給停止になる「支給停止事由」とは

永久認定であっても、法律で定められた「支給停止事由」に該当した場合は、障害年金の支給が停止されることがあります。

  • 障害の程度が軽くなったとき: 何らかの理由で障害の状態が明らかに回復し、障害年金の支給基準に該当しなくなった場合(例:医学の進歩による画期的な治療法の確立など)
  • 厚生年金保険の障害等級3級で、65歳以上かつ他の年金(老齢・遺族)を受け取れるようになったとき
  • 故意に障害を引き起こした場合や、犯罪行為によって障害を負った場合
  • その他(死亡したときなど)

特に覚えておくべきなのは、「永久」という言葉のイメージとは裏腹に、症状が軽くなれば支給が停止される可能性はゼロではないという点です。

 

誤解2:症状が悪化したら?自動で増額はされない「額改定請求」の仕組み

永久認定を受けた後、もし症状が悪化しても、年金の金額が自動的に増えることはありません

年金額を増やすためには、ご自身で「額改定請求(がくかいていせいきゅう)」という手続きを行う必要があります。これは、「現在の障害等級よりも症状が悪化したので、等級を見直してください」と日本年金機構に申し立てる手続きです。

この請求が認められれば、より上位の等級に変更され、受け取る年金額が増額されます。永久認定の方でも、症状に変化があった場合はこの制度を利用できることを覚えておきましょう。

 

 

有期認定から永久認定に変更になる可能性はある?

現在、有期認定を受けている方の中には、「将来的に永久認定に切り替わることはないのだろうか」と考える方もいらっしゃるでしょう。

結論から言うと、可能性はあります

有期認定の更新時(障害状態確認届の提出時)に、医師が診断書に「症状が固定し、これ以上の改善は見込めない」といった趣旨の内容を記載し、その内容を日本年金機構が認めれば、そのタイミングで永久認定に変更されることがあります。

例えば、当初は症状が変動的だった傷病が、年月を経て症状固定と判断されるようなケースがこれにあたります。ただし、これはあくまで日本年金機構の判断によるものであり、必ず変更されるわけではありません。

 

障害年金の認定で悩んだら、私たち専門家がサポートします

ここまで永久認定について解説してきましたが、「自分の場合はどうなんだろう」「手続きが複雑でよく分からない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

 

障害年金の制度は非常に複雑で、個々の状況によって判断が大きく異なります。特に、認定基準の解釈や書類の準備には専門的な知識が求められます。

 

もし少しでも不安や疑問があれば、私たち障害年金専門の社会保険労務士にご相談ください。あなたの状況を丁寧にお伺いし、最適な方法を一緒に考え、申請のサポートをさせていただきます。初回のご相談は無料ですので、一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。

 

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